白い壁と微細な彫刻が特徴的な駅舎に、人目を引く容姿を持つ三人連れが降り立った。一人は金髪の成人男性。後の二人はまだ子供だった。青いコートを着た銀髪の少年に、金髪を二つに結んだ少女。
 少女――アリー・ラランドは、人でごった返す構内をぐるりと見回した。
「着いたーっ! 懐かしいなあ、ビューダネス!」
「君は、元々首都に住んでいたのだったな。もしかして、十年ぶりか?」
「うん、そう。おじさんとおばさんの所にいる間は、遠出するような機会もなかったからね……リン?」
 リンと呼ばれた少年の顔色は、青ざめていた。ふらりと足元がよたつき、傍の壁に手をつく。金髪の青年、ポーラ・ブィックスが眉根を寄せた。
「やはり、背中も手当てを受けた方が良かったのではないか? 女の子の前で脱ぐのがどうしても嫌だと言うならば、医者に行くなり……」
「大丈夫です」
 少年は、頑なに手当てを断った。手当てを断る理由は、恥ずかしいなどと言う些細な問題ではなかった。
 背中の手当てのためにシャツを脱げば、女である事がばれてしまうから。
 本名はルエラ・リム。ここ、リム国が王女である。さらしで胸を潰し男のふりをして旅をしているのだ。衣類を脱げば、当然、さらしが露になってしまう。
 女であるとばれる事は、同時に魔女だとばれる事を意味した。この国、否、この世界において魔女は、忌み嫌われる存在だ。魔女は人々を惑わし、脅かす存在として認識されている。特にリム国では十年前に魔女でもあった王妃ヴィルマが大量虐殺を犯しており、人々の憎しみをより強くしていた。軍には魔女の捜査を専門とする部署まであり、魔女と知られた者は公衆の面前で火あぶりにされる。
 旅をする上で、危険はつきものだ。ルエラは、魔法をいざと言う時の切り札としていた。男のふりをして魔法を使っているからには、性別を知られる訳にはいかない。事情を知らない二人が同行している限り、医者にも寄る訳にはいかなかった。
 痛みが落ち着き、ルエラは壁から離れ歩き出す。アリーとブィックスは戸惑いつつも、ルエラの後に続いた。
「私達は城へ戻るが、アリーはこれから、どうするんだ?」
「んー。まずは、今夜の宿かな。部屋を押さえて、それからティアナン中佐の所に行こうと思ってる。彼、魔女捜査部隊だから、何か助言ぐらいは貰えるかなーって」
「そうか」
 ルエラは相槌を打つ。ルエラの横顔を見て、アリーが「あれ?」と呟いた。
「リン、それ、ピアスの穴?」
 ルエラはギョッとアリーを振り返る。慌てて耳を覆ったが、既に遅かった。
「へえ、意外ー。リンってピアスとか付けるんだ」
「アー……まあ……」
 ルエラは曖昧に微笑んで誤魔化す。ルエラがアクセサリーを付けるとすれば、それは王女としてだ。ルエラ自身は重いドレスも髪飾りも宝石も興味はないのだが、ルエラの身の回りの世話をする者たちはルエラを着飾らせたがる。失敗の噂もよく聞く一般市民の場合とは異なり、ごく小さく目立たぬように開いていると言うのに、やはり女の子だとこう言ったものに目敏いのか。
「フン、軟弱な」
 ブィックスがぼそりと吐き捨てた。彼は、リン・ブローを良く思っていない。
「えー。いいじゃないですか。そもそもピアスって、男の人が付けていたものなんでしょう? ユマ――僕の友達が、そう言ってました。
 いいなあ、リンがピアス付けてお洒落してるところ、僕も見てみたいなあ」
「ハハ……」
 恐らく、アリーの思い描いている「お洒落」とルエラが実際に着飾っている姿は、百八十度方向性が異なる事だろう。
 ちらほらと車や馬車も走っている街中の交差点で、三人は立ち止まった。城へは、この先真っ直ぐ。宿を探すのであれば、この辺りの通り沿いか脇道だ。
「それじゃ、僕はここで……」
「ああ。気をつけて」
 ここは首都、ビューダネス。同じ市内にいると言えども、人口密集地であるこの地で再び会う事があるかは分からない。連絡先を交換出来れば会う事など容易であろうが、まさか王女としての連絡先を告げる訳にはいかずそもそも城にはほとんどいない。アリーも流浪の身、固定の連絡先など持ちようがない。
 ブィックスだけはちゃっかりと、自分の連絡先をアリーに教えていた。
「今回みたいな例外でなければ、基本は城内にいるからね。何かあったらいつでも連絡をくれたまえ。力になるよ」
「ありがとうございます」
 アリーはニコニコとメモを受け取っていた。
 ルエラとブィックスはそのまま二人、城へと向かった。樫の木で出来た大きな門は、堅く閉ざされている。二人はその横にある小さな通用口から城内へと入った。左右に芝生の生い茂る石畳の道を真っ直ぐに進む。技師に作らせた銅像の手前で道をそれ、城に沿って左に周り込む。リム城は、北側半分が正面に比べ東西に広がっている。王族達の住まう塔がある辺りだ。その壁に突き当たり、道は再び左に曲がるようになっていた。更に進むと、やがて辺りは芝生からバラの生垣へと景色を変える。その向こうに見える軍舎を尻目に、道を辿る。少し行った所にある石造りの扉から、ルエラらは城内へと入った。
 ルエラの護衛隊の事務室は、閑散としていた。それもそのはず。護衛の対象であるルエラ自身が、城にいないのだ。隊の者たちは、他の部署と共同の任務となる城内随所の警備へと配属されていた。
「大尉! ――と、ブィックス少佐も。お帰りになられたんですね」
 手前の席にいた若い兵が、作業の手を止めて振り返る。彼の机には、膨大な数のファイルが積み上げられていた。
「これから、姫様へのご報告ですか?」
「ああ」
 答えたのは、ブィックスだった。
「いらっしゃるか?」
「今日の午後にはお帰りになると仰っていたそうですから、恐らく……」
「そうか」
 うなずき、くるりとブィックスは方向転換する。ルエラは慌てて引き止めた。
「待ってください! ……まさか、少佐も一緒に来られるのですか?」
「当たり前だろう。今回は私も同行していたんだ。君だけに行かせる訳にはいくまい」
「しかし、姫様から任務を授かっているのは私でして……」
「大尉である君が行って、佐官である私が行かない法はないだろう」
 ブィックスは何としても「ルエラ・リムへの報告」について来る気だ。ルエラがこの場にいるのに、報告など出来ようはずもない。このままでは、着替えてルエラとして姿を現す事さえ出来やしない。
 ルエラは室内を見回す。デスクにいるのは、ルエラを迎えたシリル・レーンと、奥の方に座る二、三人の兵士のみ。
「レーン曹長、ブルザ少佐は?」
「後宮の警備に就いています。姫様がお帰りになる予定でしたから、直ぐ対応出来るように待機を兼ねて――」
「私、先にブルザ少佐に報告してきます」
「あっ、おい!」
 言うなり、ルエラは駆け出していた。ブィックスについて来られては敵わない。
 案の定ブィックスはルエラの後を追おうとしたが、ルエラは生まれた時からこの城に住んでいるのだ。加えて、幼い頃には何度も護衛の目を掻い潜り脱走していた。近道や抜け道については知り尽くしている。あっと言う間にブィックスを引き離し、後宮へと辿り着いた。
 ブルザはルエラの部屋が位置する塔の裏門の前にいた。普段使われる事はなく、そもそもここへ来るには必ず人通りの多い執務室が並ぶ廊下を通らねばならない。護っているのは、ブルザ一人だった。駆けて来たルエラを見て、目を丸くする。
「姫様、いかがされたんですか!?」
「ブィックスをまいて来た……奴め、自分も王女への報告に行くと言って聞かないのでな」
「そんなに全力でお急ぎになるほどに?」
「いや……さして、走ってはいないのだが……」
 ズキンと背中が痛む。ふらついたルエラを、ブルザが支えた。
「すまない」
「お身体の具合でも悪いのですか」
「ちょっと、怪我をな。手当てを頼めるか?」
 ブルザの立っていた裏門から中へと入り、無事ルエラは自室へと辿り着いた。
 コート、そしてシャツを脱ぐ。ブルザは呆れたように溜息を吐いていた。
「もう少し慎みをお持ちになってください」
「私が幼い頃から護衛をしているお前に、今更恥らいも何もなかろう。時には、お前達が室内にいるまま着替える事だってあったのだから」
「昔、随分と嫌がられた覚えがありますが……」
「……昔はな。お年頃と言う奴だ」
 ブルザが私軍へ来て間もない頃だから、もう五年以上前になるか。ルエラは当時の事を思い出し、懐かしそうに目を細める。
 ブルザは再び、溜息を吐いていた。
「むしろ、普通ならば今のお年の方が気になさりそうですが」
「普通ではないからな。早熟なんだ」
 軽い調子で言って、さらしも外す。腕や背中の傷を見て、ブルザは眉根を寄せた。
「酷い……どうしてまた、このような……」
「シャントーラに現れた魔女の話は、こちらへは届いていないか?」
「お聞きしました。報告書では、ブィックスが対峙したとの事でしたが……」
 言って、彼はルエラに一枚の紙を手渡す。報告書原本ではなく、彼がまとめたメモだった。怪我をしていない方の手でルエラはそれを受け取り、丸椅子に座った。手当てを受けながら、メモに目を通す。
 シャントーラ城での一件はブィックスが軍部へ報告に行き、怪我をしていたルエラとアリーは宿で休んでいた。城に乗り込む前に軍部へ探りを入れた時にしても、ブィックスしか立場を名乗っていない。協力者の存在はほのめかされていたが、全ての手柄はブィックスのものとなっているようだった。
「なるほど。上手くやったものだな」
「シャントーラ城に棲みついていた魔女と一戦を交えたそうですね。姫様も、その場に?」
「ああ。奴は、私とブィックスを取り込む気でいた。どう言う訳か、私だけは魔法陣の上でも動く事が出来てな……。ありがとう、ブルザ」
 手当てを終え、ルエラはドレスへと着替える。腕も怪我をしているため、着衣もブルザに手伝ってもらわねばならなかった。今が冬場であるのが、せめてもの救いだ。袖の長いドレスを着ていれば、リン・ブローと同じ位置にある怪我に気付かれる危険性も低くなる。
 魔薬を飲み、豊かな銀髪が広がる。本来の長さの髪を鬱陶しそうに手で払い、ルエラは言った。
「リン・ブローはまた別の任務で出かけた事にしよう。ブィックスを呼んでくれるか」
 ブルザは、厳しい表情で救急箱を片付けていた。
「……ブルザ?」
「姫様、旅はもうお止めになりませんか」
「ブルザ。何を突然……」
「もっと早く止めるべきでした。危険過ぎます。ブィックスが共にいれば力になるだろうと思っていましたが、何の役にも立たなかった。こんな、大怪我をしてしまわれて――」
「おいおい。彼も一応、役には立ったぞ。魔女を追い払ったのは、彼なのだから。それに今回は、魔法と動きを封じられてしまったから不利な立場にあっただけで……」
「姫様の強さは、確かだと存じ上げております。しかし、敵は更に強い。その上、ヴィルマの仲間が組織立って動き、姫様の周辺を調べている……今までのように一人で旅をなさるのは、あまりにも危険過ぎる。どうしてもと仰るのであれば、私を同行させてください」
 ブルザの言葉に、ルエラも厳しい面持ちになる。眉を吊り上げ、言い放った。
「それは駄目だ。お前には、城内にいてもらわないと困る。いざと言うときのために、事情を解ってくれる味方が城内にいてくれねばならないんだ。例えば今回のような場合、お前がいなければ私はルエラ・リムに戻る事が出来なかったぞ」
「でしたら、信頼の出来る仲間を増やしてください。それこそ、ブィックス少佐にも明かされてはいかがですか」
「馬鹿を言うな。あいつは、リン・ブローを目の仇にしているんだぞ? それに、正義感も強い。魔女の味方になどなるものか」
「では、レーン曹長は? 親しいのでしょう?」
「駄目だ。あいつは、そんな重い荷を負えるような器ではない。私は一人で大丈夫だ。これまで、何とかなっていたんだ。これからだって……」
「今までとは状況が変わっているんです!」
 怒鳴り、ブルザは立ち上がる。二メートルは悠にありそうな身体で凄まれると、その迫力は圧巻たるものだった。言葉を失うルエラを見て、ブルザは我に返ったようにコホンと喉を鳴らした。
「……とにかく。このような事があった以上、私はこれまでのように姫様がお一人で旅に出るのを認める訳にはいきません。例えご命令であっても、止めさせていただきます」
 ルエラは、何も言い返す事が出来なかった。ブルザは、ルエラの身を案じて言っているのだ。それが、痛いほどに分かったから。

 旅をやめる訳にはいかない。ヴィルマはルエラの母親だ。ルエラは彼女が魔女である事を知っていながら、彼女の犯行に気付く事が出来なかった。彼女を捕らえるのは、ルエラの責務だ。
 魔女は、城にも侵入した。ルエラの護衛に当たっていたレーンをも、操っていたのだ。城に引き篭もったところで、安全が保障されるとは限らない。それどころか、所在の明らかな対象を狙うほど容易い事はないだろう。
 しかし、味方も護衛もいない放浪者の攻撃が容易いのも、また事実。
 同じ危険を孕むならば、ルエラとしては他者を巻き込む事もなく、自らの足で情報収集が出来る後者を取りたい。これまでもそうして、旅を続けて来たのだ。しかし唯一の協力者であるブルザに反対されては、続ける事が出来ない。城内で手引き出来る者も無しに長期間城を空け権力の無い他者になりきるほど、ルエラも浅はか者ではない。
「――以上が、今回のシャントーラで起こった事です」
 ブィックスの声で、ルエラは我に返る。リン・ブローはまた別の任務で出て行った事にし、ルエラはブィックスのみを呼びつけたのだ。自分で報告出来たのだから、これで一先ずは大人しくなるだろう。
「ご苦労。また何か分かったら報告してくれ」
 ルエラはこれで話を終えたつもりだったが、ブィックスは動かなかった。
「……どうした? まだ、何かあるのか?」
「ブロー大尉の件です」
 ブィックスは、真っ直ぐにルエラを見据えていた。
 男装している時を除けば、彼からルエラに意見して来る事など珍しい。リン・ブローの処遇に対しても、男装時のルエラには色々と探りを入れて来るが、ルエラに対して彼への疑問を投げかけて来たのは一度きりだ。その時も、ルエラに担当者変更の意志がないと分かるとあっさりと引き下がった。
「彼に与えている任務については、私が決めた事だ。彼の行動に依存は無い」
「何故、ブロー大尉なのですか」
「彼が適任だと判断したからだ。以前にもそう答えて、お前は納得したと思ったが」
「姫様が大尉に一任している事については、異を唱えるつもりはありません。ただ、何故彼一人にその任務を負わせようとなさるのでしょうか。もう少し担当者を増やす事は出来ないのでしょうか」
「あまり軍から人員を割きたくないし、目立たせたくない」
「二人や三人程度ならば、目立つ事もないでしょう。だから今回、私の同行を許可なさったのではないのですか」
 ブィックスは珍しく、熱くなっていた。
「シャントーラの軍から来た報告書では、城に棲みついていた魔女に私が気付き追い払った事になっているようですが、実際は違います。魔女に最初気付いたのは……ブロー大尉でした。私は、あろう事か魔女に騙され、大尉が追い詰めていたのを逃してしまったのです」
 ルエラは目を瞬く。彼が自らの手柄を放棄し、それどころかリン・ブローの活躍を認めるだなんて。普段の彼の言動からは、考えられない。
「大尉は一人で、城を調べるつもりでした。気付いた事を、誰にも告げずに……それが、今回の事件を引き起こしたのではないでしょうか。
 女が魔女だと知らなかった私は、大尉の邪魔をし、結果的に魔女に捕らわれてしまいました。恐らく、ブロー大尉もその後に。ブロー大尉自身とはお会いになりましたか? 私はこの通り無事でしたが、彼は腕と背中に怪我を負いました。腕の方は出血も多く、重症です。同じように今回、一般人の少女が巻き込まれ負傷しています。
 ブロー大尉が私やシャントーラ軍の者と情報を共有していれば、今回の結果は免れたかも知れません。魔女を捕らえられたかも知れない。少なくとも、魔女に捕らわれるような事にはならなかったでしょう。
 秘密裏に事を運びたいと仰る姫様のお気持ちも、尊重するつもりです。しかし、彼一人には少々荷が重過ぎるように思えてなりません。我々は姫様の隊です。ブロー大尉やブルザ少佐ばかりでなく、もっと我々の事も信頼していただきたい」
 ブィックスの言う事はもっともだった。ルエラが一人で行動しなければ、ブィックスと共に城へ向かっていれば、彼が魔女に騙されるような事はなかっただろう。ブィックスの邪魔が無ければ、それどころか彼もあの時点から魔女を追い詰めるのに協力していれば、あんな事にはならなかったのかもしれない。
「……検討する」
 やっとの思いで、ルエラはそう言った。
「それから……もう一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何だ?」
 ブィックスは、今度はやや躊躇いがちだった。
「……私の気のせいかも知れません。あの時は、意識がはっきりしていませんでしたから……変な事を申していると思われるかも知れませんが……」
「何だ。はっきり言え」
「姫様も、シャントーラにお越しでしたか? シャントーラの、あの廃城に」
「行っていない。似た人物でも見たのか?」
 確か、城を出た後にリンにも聞いて来た。しかしあの城で、ルエラは元の姿に戻っていない。ルエラの本名を呼ぶ者もいなかった。ばれる要素など何もないはずだ。余程気になっているようなので尋ね返したが、ブィックスは首を振った。
「いえ。お気になさらないでください」
 コンコン、と軽く戸を叩く音がした。ルエラは、「入れ」と短く答える。扉を開けて戸口に立ったのは、召使いの者だった。
「お食事の準備が整いました」
「そうか。ありがとう、直ぐに行く」
 ルエラは立ち上がる。途端に、ズキリと背中が痛んだ。咄嗟に、目の前の机に左手をつく。ブィックスが心配げに駆け寄って来た。
「大丈夫ですか、姫様」
「……心配ない。立ち眩みだ」
「お手を」
「本当に大丈夫だ。ありがとう」
 やんわりと断り、戸口へと向かう。後についてきたブィックスが、険しい声で尋ねた。
「姫様、右腕……お怪我をなさったのですか?」
 ルエラは思わず、左手で右腕を隠すように体の前に引き寄せる。長袖によって包帯は隠れているが、それでも注意して見ていれば右手をかばうように動いている事は気付くだろう。
「何、大した事はない。ちょっと、木に引っ掛けてな」
 振り返らず軽い調子で言ったが、ブィックスは腑に落ちない様子だった。


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2014.2.22

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